【続】興味があるなら恋をしよう

一日、二日は特に何も思わなかった。課長だって忙しい、疲れてる時もある。
…こんなものかなと思った。
一週間過ぎ、…更に週末が来た。

今日は遅くなっても大丈夫だから、ゆっくりご飯を食べて帰ろうと課長が言った。
仕事を終え、和食屋さんに行った。

メニューから好きなものを選び、更に、あれこれと食べるのに迷う程、課長が追加注文をした。

「こんなに食べられませんよ?」

「いいから。沢山を少しずつ食べたら、結果、結構食べた事になる。さあ、食べよう」

「はい」

なるほど。とにかく、食べなければ駄目なのよね。…美味しそう。

「うん。その顔だ」

「え?」

「…そんな顔で食べるのを見るのは久し振りだ」

ずっと…、漠然と、心配事を抱えていた訳だよな。

「え…、私…」

「あ、これ、好きだろ?俺も好きだから半分こな?」

課、長…。

「はい」

ひょっとしたら…本当に毎日、私は…浮かない様子で食べていたのかも知れない。

「仕事…辛くないか?ん、というか、会社」

「え?大丈夫ですよ?」

「そうか。…なら、いいんだ」

本当にそう思ってるのなら、いい。
坂本と顔を会わせる事は……昔の感覚になった、…慣れた、という事か。
確かに、普通に、仲よさ気に話をしている…。普通だ。
…不自然に避けている感じはしないが。解らないといえば解らない。

当初の紬の希望通り、辞めさせていても良かったのかも知れない。
その方が本当は楽だったのかも知れない。
だが、すぐ会える距離に居る相手に…会わずに忘れよう忘れようとすると、余計、募るのでは無いかと判断した。
だから、大丈夫だろうと言って、辞めさせなかった。

無理に忘れようとする事が、ずっと考える事になる。頭の中にいつも居る事になる。
その方が…永遠に思いは忘れられないものになるんじゃないのか…。
違った思いで、その上で関わっていられるなら、その方がいいと思った。
思いは無くせないけど、長い時の中で、変化させる事は出来るはずだ。

でも……酷な事をさせてしまったかな。
好きな上で…関係を持ち、終わらせ、また気持ちの通い合ったまま元に戻る…。

…出逢った頃に。
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