ハロー、マイセクレタリー!
自分の顔が人より整っていることを知ったのは、おそらく小学校に入った頃だったと思う。
当時から、カッコいいねと言われる度に、さほど嬉しさを感じなかったのを覚えている。
なぜなら、大好きな両親……
とりわけ、父親と僕はまるで似ていないからだ。
くっきりとした二重の瞼からは、やや長いまつげが伸びている。彫りの深い目鼻立ちに薄い唇に、やや栗色で天然のパーマが緩くかった髪は、時折ハーフなのかと疑われるくらいだ。
身長も年齢の割には高く、スタイルを褒められることもある。よほど老けて見えるのか、高校生に間違われるのは日常茶飯事だ。大人びた顔で、ランドセルを背負えば、そのミスマッチ感が大人たちの笑いを誘うこともある。
顔が整っているだけで、よく知らない女の子から好きだと告白される。気付けば学校一のモテ男という大して嬉しくない称号も得た。からかってくる友達をやんわりかわしていたら、みんな僕をからかうのにも飽きていった。
対して、首相秘書官を務める父さんは、誠実さと信頼感のかたまりのような外見をしている。
一重のくりっとした瞳に、小さく控えめな鼻、笑うと大きく開く口、柔らかめの黒髪。人の良さそうな顔立ちに加えて、小柄な細身の体と柔らかい口調で、人の警戒心を簡単に解いてしまう。
父と二人で並べば、口々に「お母様似なのね」と言われるが、実際に母と似ているのは、肌が色白なところだけだ。
では、誰に似ているのか。
本当は考えたくもないけれど、今の僕の心の中には、一つの候補が浮かび上がる。
つい、数週間前に見知らぬ他人から告げられた“事実”は、俄には信じがたいが、妙な説得力があった。
他人であるが故に、僕に嘘を付く理由がないからだ。