ハロー、マイセクレタリー!

「今回はさぞ驚かれたでしょう。近所でも有名なんです。息子は子どもの頃から、あなたにそっくりだと。そんな噂に尾ひれが付いて、いつの間にか本気にしてしまう人間がいるとは、思ってもみませんでした」
「本当に、よく似ていて私も驚きました。うっかり、自分に息子が居たのかと疑うところでしたよ」

青田舜太郎ははにかむように笑ってから、僕の顔をもう一度目を細めながら見下ろした。その瞳は、どこか懐かしいものを見つめるように、優しかった。

「それでも、中身は私には似ても似つかない、聡明で理知的なお子さんだ。きっと、お父様の影響でしょう」
「いえいえ、教えたわけでもないのに、大人の真似をして勝手に行動するので、困ったものです。それでも、何だかんだ言いつつも、私にとっては自慢の息子です。少し親馬鹿が過ぎるでしょうか?」
「いいや、いい息子さんをお持ちだ。私には子どもが居ませんから、素直に羨ましいと思いますよ」

その言葉に、父さんはただ「ありがとうございます」と頭を下げる。

直接的に言葉にはせずとも、互いの存在を認めている二人。
実の父でありながら、自分に子どもは居ないと言い切った男と。
血が繋がらない子どもを、自慢の息子だと胸を張る父。

間違っているようで、間違っていない。
人生に正解なんてない。
ただ、この答えは、僕が望むものだ。

僕は最後に「さようなら」と言い残して、部屋を出た。
交わったのは一瞬だったけど、それでも僕たち“親子”には意味のある時間だった。
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