ハロー、マイセクレタリー!
「どうして、結依子は一人で?」
「一人でホテルへ乗り込んだお前には、言われたくないと思うぞ」
「……そうだけど、別にそこまで焦って行動しなくても」
「そうだな。お前にももっと賢いやり方はあったはずだ」
いつの間にか、父さんを責めるような口調になっていた。でも、逆に攻め込まれてすぐに閉口する。
確かに、もっとやり方はあった。
大人達に任せた方が、きっと安全で確実に結果を得られただろう。事実、あの時父さんが部屋に現れなかったら、無事に帰れたかどうかさえ分からない。
それでも、僕は何としてもこの手で何とか結依子を守りたかったのだ。
「別に責めている訳じゃない。子どもと言っても、もうお前達には十分に自分で考えて、行動する力がある。何が正しくて、どうしたいのか。すでによく分かってるだろう?」
僕は父さんの問い掛けに、こくりと頷く。
「だからもう、自分が正しいと思うように、やればいい。大人は、静かに見守るだけだ」
僕の考えていることは全てお見通しと言わんばかりに、父さんは微笑んだ。
「本当に、思うようにしていいの?」
恐る恐る聞き返した僕に、父さんは少し呆れたような渇いた笑いを一つ漏らす。
「何を迷ってる?」
「迷ってるというより、絶えず考えてるんだ。“このまま”でいいのか」
核心をつく言葉は言えずに曖昧に答える。それでも父さんは僕が何を言いたいのか、理解したようだった。
口元だけは笑っていたけど、視線は恐ろしいほどに真剣だった。
「僕なんかが彼女の側にいてもいいのか、か?」
試すような口ぶりに、僕は思わず頷くのを躊躇した。本当のところ、僕は何百回、何千回と自問自答したか分からない。