ハロー、マイセクレタリー!
「奏の問題は解決したの?」
肝心な結依子の用件には触れられないままでいたら、代わりに質問を投げかけられる。
「ああ、それは。父さんはともかく、結依子がどうして知ってるの?」
「あら、心外だわ。奏が何か隠し事してるわよって、透君に教えてあげたの私なのに」
してやったりと、得意げに微笑む唇が憎らしくも、愛おしい。
なるほど、結依子からバレたのか。
納得するとともに、涼しい顔で隠していた筈の心の動揺を、見事に見破られていたことが恥ずかしくて、僕はその場で悶絶しそうになる。
「僕はそんなに分かりやすかった?」
「そんなに落ち込まないで。私が鋭すぎるだけだから」
「落ち込んではないけど、プライドがボロボロなだけ」
「ごめんね、奏が傷付くことは分かってたけど。奏にもしものことがあったら困るもの」
得意げに笑った顔を引っ込めて、途端に心配そうに表情を曇らせる。
それだけで、僕の心はかなり持ち直した。
結依子には申し訳ないけれど、僕のことを本気で心配してくれたことが単純に嬉しい。
「いいよ、もう。父さんが来てくれて助かったし。僕の方は無事に解決した。もう、何の問題も無い」
問題どころか、僕の心の中にあった悩みまで、一気に解決した。
「そう、それは良かった」
「何があったかは聞かないの?」
「奏が話す必要がないと思ったことを、わざわざ聞く必要ある?」
「ないね」
「でしょう?」
何一つ尋ねないのは、彼女のぶれることのない人格と、僕に寄せる信頼の証。
それが永久に失われることがないように、僕は願い、そして努力すると誓う。