ハロー、マイセクレタリー!
首相公邸に向かう車中で、父さんはもう一つ僕に助言をくれた。
『好きな女なら、ずっと傍で守ればいい』
迷いのないひと言に、僕は大きく心を動かされる。
『こればっかりは、俺は一度瞳を手放してひどい目に遭わせてるから、偉そうに言えないんだけどな』
少しばつの悪そうに笑う父さんに、親近感を覚える。かつて同じ迷いを抱えていたであろう父さんの言葉を、少しも聞き逃すまいと耳をそばだてた。
『結果的に、そのお陰で俺はお前の父親になれたから、悪いことばかりじゃなかった。でも、離れてる間、後悔しない日はなかったな。だから、反省も込めて、これは力説しておくことにする。奏、お前は自分の気持ちに正直に生きろよ』
ありがとう、父さん。
僕は、もう迷わない。
目の前にまっすぐに伸びる道。
たとえ、この恋が叶わなかったとしても、僕にはもう守るべきものが見えているから。
あとはひたすら前に進むだけだ。
「結依子、好きだよ」
よほど思わぬ告白だったのか、大きく目を見開いて、顔を真っ赤に染めたプリンセスは。
こともあろうか国会議事堂の前で(正確には裏だけど)仮面をかぶるのも忘れて、間抜け面で立ち尽くすのだった。