君の花火
笑う横顔


時間があっという間に過ぎた休み時間も、普段はつまらないと思う授業も、君の隣にいるだけで楽しいと思った。



授業中君は、退屈そうにあくびをしたり、いきなり怒りだして席を立ったり、前に座る友達の椅子をけったりして。



そんな君を見て、俺が今まで考えていたあの事が馬鹿馬鹿しく思えてきて、俺も君みたいに真っ直ぐ居られたらなんて思った。





君の友達の会話で、君の名前を知った。


五十嵐向夏。



心の中で君を呼んでみると、君が振り向いた。
「今、あたしのこと呼んだ?」って。
少し頬を染めて、嬉しそうに「なに?」って。



「呼んでないよ」って言うと君が不思議そうに首を傾げた。
「あれ?今呼ばれた気がしたんだけどなあ」
「気のせいだよ」


頭を悩ます君を見て、可愛いなと思った。
君のことを呼んだのに、呼んでないと言った。




呼んではいけない気がした。


君の名前を呼ぶのにはまだ、いけない気がして。





呼んでしまったらきっと、この想いを確信してしまいそうで。




隣の席で、つまらなさそうに授業を聞く君に少しだけ笑った。




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