君の花火
■■帰り道■■



「そういえば、ハルん家どこ?」
「俺ん家?」
「うん」
「どこだったっけなー」
「目印になるものとかない?」
「目印?」


家の周りを思い出しているのか、ハルは「うーん…」と唸った。


「あ、家の前に小さくて細い坂があるよ」
小さくて細い坂…あ。
「地獄坂!!」
「地獄坂?」
「そう!その坂、絶対車も通れやん細っこい道でしょ!」
「そうそう」
「あそこか~」
あんなところに引っ越したんか。しかもこの真夏に。


「わかるの?」
「分かりますとも」
フフんと鼻を鳴らした。
「あたしの家、その坂の上だからね」
「え、さらに上があるの」
「あるよ~この街なめたらダメだよ」


しょうもない話。どうでもいい話。
好きな食べ物の話。嫌いな食べ物の話。


「好きな季節は?」
「夏!ハルは?」
「俺も」
「一緒だ!!」


学校から徒歩20分。
遠いような近いような微妙な距離。
クネクネ細い道をいくつも通って笑って。


「日陰!!」
「ほんとだ。涼しいね」


いつもは一人で通るこの道も、今日は二人。



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