君の花火
…まだかな。
検査して、今は結果を聞くために担当医のところにいる…が、その担当医が机の上の画面と資料を行ったり来たりしてにらめっこしているのだ。
お父さんには聞かれたくないから、待合室で待ってもらっている。
一番最初に聞く約束をしているから。
だって、悪くても良くても自分で聞きたい。
一番最初に受け入れなくちゃいけないのはあたしなんだから。
どうするかっていう判断も、自分でしたいし。
それに…自分の体の事だ。
自分が一番よくわかっている。
良くないんだなって、わかってる。
「あの、先生」
それでも先生に聞きたがるのは、きっと自分がまだ受け入れきれていないから。
「あ、ああ…」
どこか浮かない表情。
やっぱりね…。
「先生、悪いなら悪いってはっきり言って」
「はは…っ。向夏ちゃんは強いね…」
強い?別にあたし強くないよ。
だって、受け入れるしかないじゃん。悪いのは仕方ないんだから。
だって今もほら
「体には何も出ていなかったと思うけど…心臓がね…」
ああほら。
受け入れなくちゃ。
「薬を…増やしてください」
「もちろん、そうするよ。だけど向夏ちゃん、いつ倒れても可笑しくないんだよ。手術とか」
「わかってます。でも、卒業までなんとか」
お願いしますと頭を下げた。
「わかっているよ。でも忘れないで。君の身体は、もう長くはないことを」
「はい…」
「親御さんには自分から話せるかい?」
「………………はい」
「話すのは、早めにね」
「…わかってます」
重い腰を上げ、先生に頭を下げた。
診察室を出ると外で待っていたお父さんが駆け寄ってきた。
「…どう、だった」
心配してる顔…。お父さん、らしくないよ。
ごめんね。
「大丈夫だって!」
笑え。大丈夫だって言うんだ。
私が笑った。お父さんも笑った。これでいい。
今はこれでいいんだ。
ごめんね。今だけは…。
嘘をつく私を、許して下さい。