君の花火
■■広瀬春樹■■

■広瀬春樹■


「あっついなあ…」
「仕方ないでしょう?7月入ったばかりなんだから」
「そうだけどさあ、この暑さ溶けそう」
「そんな簡単に人間溶けんわ」


静かな田舎町。
特別大きな事件も起こらないし、かと言って小さな事件も起こらない。
まあ、とにかく平和で何もない田舎町なのだ。


春は沢山の桜が街中を包んで、夏には海の潮の香りが広がって祭りがあって。
秋には紅葉が色とりどりでご飯が美味しくって。冬には雪が沢山積もって辺り一面、真っ白な世界になる。


ちょっと歩けば8割知り合いに会い、商店街がある。
みんな顔見知りで、仲良しで。
だからこそ、噂が回るのも早いのだ。


「ねえねえ麗ちゃん、転校生来るんだって。知ってた?」
「え、今日?」
「そう」
「あ、俺知っとるわ。男子だってな」
「そうなの?!どんな奴?!」
「え、さあ?そこまでは知らんよ」


高校2年。この田舎町で育って17年。
小さい頃から変わらない友達。
喧嘩も多いけど、その分、分かり合ってる。


「つかシバ先遅くね?」
口は悪いけど友達思いでお祭り好き。西田健介。


「転校生のことじゃないの?」
スラッとした身長に凛とした表情で、お姉さんみたいな存在の花咲麗華。


「馬鹿。人の話くらい聞いとけや」
賢くて少し無愛想だけど面倒見がいい矢野佑都。


「早く来ないかな~」
栗色のショートヘア。チビで頭もそこそこなあたし。五十嵐向夏。



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