君の花火
古びた校舎。
ギシギシ音が鳴る廊下。
木の香りと熱気を含んだ風が通る教室。
その真ん中の一番後ろが私たち4人の席。
前二人が健ちゃんと麗ちゃん。その後に私と佑都。
私の左側が空いている。
ということは多分、転校生の男の子なんだろう。
「向夏、そんなに睨んでどうしたの?」
「…こんな時期に転校って思って。しかもこんな田舎」
さすが麗ちゃん。
あたしの表情で気付かってくれるとは。
「確かになあ」
「なんか理由有りなんだろ」
さほど興味がなさそうに答える健ちゃんと佑都。
もうちょっと反応してくれてもいいじゃないか。
「おーい。席つけー」
「あ、やっとシバ先来た」
うちのクラスの担任、柴田元。通称シバ先。
いつもジャージでちょっとタバコ臭い31歳。
基本、生徒重視で授業を進めるから、生徒も先生に親しんでいる。
「シバ先、転校生来るって本当?」
「あーなんだ。お前らもう知っとんのか」
「俺の情報をなめるな」
「佑都、お前の情報は逆に怖い」
クイッとメガネを上げるフリをした佑都に教室が笑いに包まれる。
「さて、おーい。もういいぞ」
開いたままの教室の前の扉から入ってくる男の子。
騒がしかった教室が一瞬静かになった。
私たち4人も、会話が途中で切れてしまった。
一言では表せない、綺麗なそんな男の子。
「なんだ、ヤローかよ!」