プロポーズはサプライズで
「あーあ。思い出してにやけるなよなー。いいねぇ、幸せ者は。誰のせいでこうなってると思っているのかねぇ」
頬杖をついてビールを傾けながら、三笠くんが珍しく恨みがましい声を出す。
「そういわないでよ。ちゃんと考えてきたって、プロポーズ大作戦!」
三笠くんだってリア充のくせに。
ただ、再プロポーズのタイミングがつかめないってだけじゃん。
「聞かせてみろよ」
「国島さんが来たらね」
「もう来たよ、ほら」
四人がけの席の私の隣に、ドカッという音と共に荷物が置かれた。
見上げれば、この寒い中額に汗をにじませた国島さんがいる。
「お、お疲れ様です」
「おう」
「走ってきたの? 国島さん。別に俺、川野を取って食ったりしないよー」
「別にそんな心配はしてない」
そう言いつつ、ネクタイを緩めて私の隣に座った。
「八重、何飲んでる」
「梅酒です」
「甘いやつか。じゃあ、俺はビールで」
国島さんが、お通しを持ってきたお店の人にそう言った瞬間、三笠くんが噴きだした。
途端に、国島さんの眉間にしわが寄る。
「……なんだよ」
「いえいえ。わざわざ名前で呼ぶとこ見せつけなくても」
「そんなことはしてない!」
「ハイハイ、そーっすか」
三笠くんってすごいなぁ。こんな感じにやり込められている国島さんってかなり珍しいんだけど。
思わず彼をガン見してたら、横から頬をつねられる。
「お前も、ぼけっとしてるな」
「痛いですって」
ふてくされた国島さんは、なかなかに新鮮でいいな。
やがてビールがやってきて、私たちは仕切り直しに乾杯することにした。