プロポーズはサプライズで



「お疲れ様でした。明日も頑張りましょー」


立て続けに交わされる挨拶の声に、徐々に意識が覚醒してくる。
そういえば額がひんやりしてるな。誰かが冷たいタオルをのせてくれたみたいだ。


「……気づいたのか?」


うっすら目を開けると、国島さんが私を覗き込んでいた。蛍光灯の明かりが背中になっているので、顔には影がかかり良く見えないけど声は心配そうだ。


「国島さん? ……えっと、ここは」


いまいち状況を理解できていない。
気分の上がり下がりが激し過ぎてすごく疲れたよ。


「ここは楽屋。倒れたから休ませてもらったんだよ」


どうやら着付け用の畳スペースに、クッションなんかを集めて簡易布団を作ってくれたらしい。布団代わりにかけられているのは、国島さんのコートだ。簡易カーテンが閉められていて、中にいるのは私と国島さんだけみたい。


「……悪かったな」


国島さんの大きな手が、私の頭を撫でる。


「国島さんはどこから知ってたんですか」

「この間、三笠くんから呼び出されて飲んでてさ。プロポーズ作戦の時に逆に八重を騙したいって言われて、……まあ、最初は反対したんだけど。色々あって押し切られてな」

「私、明日美がいなくなったかと思って、本気で心配したのに」

「三笠くんにしてみれば、八重が心から祝福してるってのが明日美ちゃんに伝わらないと頷いてもらえないって思ったらしいぞ」


つまり、内心私の計画にはダメ出ししてたってことね。
くー、腹立つな。

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