プロポーズはサプライズで

どうやら、他の役者さんたちはもう帰ったらしい。
控室全体を見ても、私たちと三笠くんと明日美だけのようだ。


「ま、そんなわけだよ。納得してくれた?」


三笠くんが王子様スマイルで笑う。
ズルいなー。私この顔に弱いんだよな。責められず唇を尖らすことしかできない。


「まあ、最終的にプロポーズも見れたから文句ない」

「そっか。よかった」

「明日美のこと、ちゃんと幸せにしてあげてね」

「さあ、どうだろ。それは明日美がどう感じるかだけど。俺は明日美に幸せにしてもらうつもり」


明日美の方を振り返って微笑む。

いつも三笠くんが振り回しているようだけど、気持ちの部分では彼が明日美によりかかっている。
昔から変わらない、ふたりの距離感。

ずっと見つめてきた私にとっては、それはとても自然に映る。


「良かったね、明日美」

「ありがと、八重ちゃん」

「あ、そういえば指輪見せてよ」


さっきはテンパっていてよく見えなかったけれど、改めてじっくり見せてもらったら、先ほどの劇中で出てきたブルースターの花が彫られていた。ダイヤモンドかと思った花は実はアクアマリンで、ブルースターの花を表していたらしい。


「この劇全体が、プロポーズの布石だったんだね」

「まあね。一応、それは考えて脚本担当と話し合ってた」


全ては三笠くんの計画のうちだったってことか。
私にプロポーズ大作戦を立てさせるのもプランのうちだったのかな。

利用されたのは腹が立つけど、ここまでくると逆に怒る気力も沸かないな。
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