プロポーズはサプライズで
決行は三笠くんの劇団公演前日の最終通し稽古の時。
その日は本番の舞台を借りて行い、全体の流れを見るため、よっぽどのミスがない限りはほぼ本番どおりに通すらしい。身内とか友人を呼んでもいいらしく、三笠くんの話じゃ、毎回十人くらいは来るものなのだそうだ。
そこで演技が終了したときにちょっとした小芝居を演じようと思うのだ。
劇が終わり拍手に包まれた時、本番では出演者がお礼がてら舞台上に勢ぞろいする。
ひとりひとりの名前を呼びあげ、お礼をする、その一連の作業が終わったタイミングで普段は落とされない客席側の照明を落とす。
その時に明日美のひざの上になにかが落とされれば、彼女は当然悲鳴をあげるだろう。
不安で三笠くんを呼ぶかもしれない。
そこで彼が彼女を迎えに来て、ひざの上に置かれた花束を彼が拾い上げて王子様スマイルを見せる。
「そしてプロポーズだよ。よくない?」
「王子様スマイルって……ホント川野はそういうの好きだよな。そもそも……俺、そんな観客の中で言わなきゃダメなの?」
私の意気込みとは裏腹に、当人はあまり乗り気じゃないらしい。
いいじゃん。ていうか、私が見たいし、三笠くんの王子様スマイル。
「だってせっかくのサプライズだし」
「明日美も恥ずかしがるんじゃない? ただでさえ人前に出るの苦手なんだし」
さすが三笠くん。明日美の性格は理解しているなぁ。