プロポーズはサプライズで
そもそも、八重にはあんまり女臭さがない。
髪は黒のストレート。前髪がちょっと重く、一番のチャームポイントと思われる瞳がいつも隠れているのが俺的には不満。
仕事の時の服装は清潔感があり、本人曰く、「よくわからないのでマネキンさんが着ているものをそのまま買って着ています」とのこと。プライベートになるともう少し可愛い系の格好をする。
真面目ではあるが、やる気はない。
そんな印象である彼女を、俺は最初どちらかと言えば呆れた目で見ていた。
ひょんなことから深く話すようになってみれば、恋愛にさえやる気が無いのが分かった。
二十六の女としてそれはどうなんだよ、とちょっかいを出すうちに、俺は知ってしまったのだ。
彼女のオタク趣味を。
会社にいるときとは打って変わった生き生きとした表情。
普段の諦めきった態度とは裏腹な欲しいものを得るために努力を惜しまぬその姿に、なんだかハマってしまったのだ。
三笠くんは、そんな八重のオタク友達で初恋の人でもあり、彼女の親友の彼氏でもある。
恋愛に対しては諦め方向に働く彼女の思考は、告白などせずに親友の背中を押すというところにたどり着いたらしい。
バカだよな。
お前だって、可愛いのに。
笑ったら、もっと笑わせたいって思うくらいには魅力的なのに。
なんで自信を持たないんだ。
そんなわけで押しに押した結果、俺は彼女の心を捕まえた……と思うのだが。
【今何してる?】
何気なくLINEでメッセージを入れるも、既読にすらならない。
これを言うと、前の女と比べてるようだから本人には言えないが、歴代の彼女は、電話だろうがメールだろうが大抵すぐに返信してきたものだ。
【お疲れさま】は当たり前、【ご飯食べにくる?】なんて甲斐甲斐しい言葉もかけてくれた。行けば普通にお泊りコース。自分から追いかけなくても、彼女たちはスムーズに俺を受け入れた。