プロポーズはサプライズで

「十年もたてば惰性もあります。他の女に目移りはしないくらいには好きだけど、口説き落としたときの情熱は無い。感情って変化するでしょう。もしかしたら彼女の知らない面がまだあるかもしれないけれど、今の状況を続けていたってそれは見えてこない。結婚なり、出産なり、生きていくには変化が必要で、そこで見た新たな面に惹きつけられるから夫婦はずっと一緒にいられるんじゃないすか」

「三笠くん、達観してるなぁ」


でも確かに、男女の付き合いというのはそういうところがあるだろう。
激情はいつまでも続かない。かと言って緩やかな愛情は時に生ぬるすぎて、目移りしたくなったりするのだ。

どんどん八重にハマっていくのは、あいつが予想つかなさすぎるってのもあるかもしれない。


「国島さんにもメリットあるでしょ。協力してくださいよ」

「協力ったってな。何をどうすればいいんだ」

「上演中、川野が舞台に集中してなければ、国島さんの方に気を引いておいて欲しいんですよ。明日美が抜けるのに気づかれたらアウトなんで。あと、川野が気づいてパニックになったとき、すぐ助けないでください。一人にして不安にさせてほしいんです。あとは俺の方でうまくするから」


慌てふためく八重が想像できて、やっぱり素直に頷くには抵抗がある。


「いやでも、騙すってのはな。俺たちの信頼関係にもかかわってくる。それに」


やっぱ可哀想だし、と続けようとしたとき、LINEメッセージを着信した。

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