プロポーズはサプライズで
【国島さん、残業ですか? お疲れさまでーす】
軽い返事の上に、続けてスタンプが何度も押される。
なんだよ、妙に上機嫌だな。
「あ、川野からですか? アニメ終わった時間だからなぁ」
「は?」
もしかして、既読にもならなかったのはアニメ鑑賞中だったからか?
前にも電話をしたとき、「アニメ中なんで後でかけなおします」ってことがあったが、あれか!
八重の趣味にケチをつける気はないけれど、そこまで夢中にならなくてもいいんじゃないのか。
LINEくらい覗けよ。俺のメッセージだぞ?
「BSのアニメ枠ですよ。この時間、明日美も俺の相手してくれないんですよ」
「三笠くんは見ないの?」
「俺はビデオ録画で見ます。今日は元々打ち合わせ入っていたので」
「打ち合わせってなんの?」
「劇の脚本のです。ギリギリでちょこちょこ直してるもんだから。明日変更分一気に稽古つけないと」
「へぇ」
「こんな間際まで変更入れるのか」と呟くと、「普段はしないですね」と返された。
先ほどの協力への返答は曖昧に濁し、なんとなくだらだら日常話をしつつ飲み続ける。
乾杯のビールから日本酒へと変わり、酒はそんなに弱くはないつもりだが、仕事の疲れと若干の苛立ちからいつもより酔いが回るのが早かった。