プロポーズはサプライズで
「……八重はホントに三笠くんのこと吹っ切れたと思うか?」
「それ、俺に聞かれても答えようないですけどね」
「何かっていうとすぐ『かっこいい』だよ。お前の彼氏は誰だよってたまに聞きたくなる」
「あー。川野らしい……かなぁ。彼女にとって、俺、ヒーローレッドらしいんですよね」
「その感覚が俺には分からん」
お猪口の酒を飲み干すと、すぐさま次が注がれる。
気も利くんだな、三笠くん。男にしておくのがもったいないくらいだ。
「まあ心配ですよね。でも俺たち友達だし、会うなって言われても困るしなぁ」
「まあな。そこまで俺も制限する気はないけど」
というか、三笠くんと会うなって言った時点で彼女の中の俺の格が一気に下がる気がする。
「じゃあやっぱり、国島さんも俺と明日美が結婚しちゃった方が安心でしょ」
前のめりになる三笠くんに、しまったな、と思う。
これは、完全に丸め込まれるルートに入ってしまった。
「俺に協力、してくれるよね」
にっこり笑ってウィンクする。
八重がこの男のこの顔に弱いのが少しだけ分かった気がする。
飄々としているようで、こちらのペースを読んで逃げられないところに来てから追い込んでくる。
これじゃあ、ここから形勢逆転できる気がしない。