プロポーズはサプライズで
* * *
そんなわけで当日。
全ては三笠くんの思惑通りに動いていった。
八重は、明日美ちゃんを見た時点でボタボタと涙をこぼしたが、自分が泣いていることすらわからないくらいのパニックぶりで。
そんな彼女を見ていたら、俺はやっぱり三笠くんに協力したことを後悔した。
彼女のプランが甘かろうが、誰がどういう策略を練ろうが、俺だけは八重の味方でいてやればよかったんだ。
あんな風に泣かした罪悪感に比べれば、ヤキモチ妬かされるくらいなんてことないじゃないか。
……なんて、盛り上がったのもつかの間。
あろうことか三笠くんに向けて「かっこいい」というセリフを残して倒れる八重に、そんな殊勝な気持ちはあっさり鎮静化した。
前言撤回。やっぱり嫉妬ってしんどい。慣れないことはするもんじゃないな。
楽屋の畳スペースに移された八重はまだ寝息を立てている。
頭を冷やすために前髪をかきあげ、濡らしたタオルを乗せる。彼女は「うう」と一度うめいたが、再び眠りに落ちていった。目尻にはまだ涙の痕が残っている。
確かにベタでパンチの弱い企画だったかもしれないが、初めての企画が失敗に終われば、そりゃショックだろう。
何より、諦め通しだった彼女がこういった企画をやると言っただけでも進歩だと思うのに。
「なぁ」
反応のない彼女に呟く。