天神学園の問題児再来
狐に摘ままれたような顔をするシオンの視線を背に、ヴラドは歩いて行く。

…いい朝、か。

吸血鬼にとって、いい朝など存在しない。

太陽を克服したとはいえ、吸血鬼にとって日の光は忌むべきもの以外の何物でもない。

それを、可愛い生徒に語り掛けられたとはいえ、何故当たり障りなく受け答える必要があったのか。

(可愛い生徒…?)

自身の思考に、また疑問を覚える。

可愛い生徒だと?

学園の小僧どもなど、全員口喧しいだけ、囀るだけの存在ではないか。

自身以外の他者に向ける親愛など、吸血鬼の自分には無かった筈だが。

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