天神学園の問題児再来
「……」

リプニーもまたトボトボと、夜道を歩く。

エージェントとして、初めて単独で任務を任された。

今まで父や母、霸龍闘やリィのサポート要員でしかなかったリプニーの、初めての単独任務。

それがこの結果だ。

誰も黒爪の犠牲にはならなかった。

だが、生徒達を守るべき立場の自分が、僅かな時間ではあるが気を失い、逆に生徒達に守られていたという体たらくぶり。

インフィニティ・セクター本部へのレポートは、何て書こう…。

すぐに代わりのエージェントが派遣されてきて、自分は連れ戻されるかもしれない。

そう思うと、悔しくて涙が出てきた。

無力だった。

天神学園に来てから、失敗の連続だ。

父と母は有能なエージェントだった。

『番のエージェント』という称号を作り上げた、インフィニティ・セクターの初代エース。

だが自分は、その親の七光りでしかないのか…。

と。

「そう思うなら任務を続行する事…」

突然抑揚のない声が聞こえ、リプニーは顔を上げる。

…暗がりの先、街灯の下に華奢な女性が立っていた。

ハニーブラウンの髪を揺らす、可憐な女性。

「失敗したから任務を断念する…そんな事を繰り返していては、貴女は本当に『親の七光り』…私も霸龍闘も、エージェントになる前から無数の失敗と挫折を繰り返した…」

女性は柔らかく微笑む。

「気を失っても屈する事なく、すぐに黒爪に携行砲を向けた闘志…あれがあったから、私は加勢する事なく見守り続けていた…」

「み…見ていたんですか…?」

驚くリプニーにもう一度微笑みかけ、ハニーブラウンの髪の女性…リィは頷いた。

「胸を張りなさい…貴女は『初代番のエージェント』の娘…背中を丸めて俯いていては恥ずかしいわ…」

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