天神学園の問題児再来
教室に入る。

「あ、真太郎君おはよー♪」

真太郎の姿を見とめるなり、挨拶するのは紫陽花。

今朝も彼女は元気だ。

色白とはいえ、雛菊の血筋の女の代名詞が『夏の娘』なのは変わらない。

梅雨時だろうと猛暑日だろうと、夏になると彼女はすこぶる元気がいい。

能天気で何も考えていないように見える、ただただ燦々と降り注ぐ太陽のような娘。

しかしその名の通り、しっとりと雨に濡れて咲き誇る紫陽花の花のような一面も持ち合わせている。

紫陽花に対してそんな印象を抱くのは、真太郎の過大評価か。

…黒爪に屈辱を味わわされ、崩れるように慟哭した夜。

孤独だった真太郎に寄り添ったのは、紫陽花だった。

紫の大輪の花は、包み込むように、傷ついた真太郎を抱いていた。

今思えば、真夏の暑さで見た、幻覚のようではあるが。

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