天神学園の問題児再来
ヴィラを出て、ウッドデッキの軒下に立つ花龍。

辛うじて雨に濡れる事のない位置から、彼女は目を凝らした。

…間違いない。

桟橋に立っていたのは、花龍の知己の吸血鬼だった。

…しかも忌み嫌っている方の。

「是好的夜晚,小姐(いい夜だね、お嬢さん)」

三日月のような口元、その口角がつり上がる。

あの不愉快な笑みを、花龍は忘れていない。

嘗て彼女達に屈辱の敗北を刻み込んだ男、黒爪。

「…こんな土砂降りの夜が、いい夜ですか?」

「そうさ、そうとも、そうだとも」

雨に濡れる事も厭わず、黒爪は両手を広げた。

「混沌と、混乱と、叫喚を彷彿とさせる…実にいい夜だ」

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