天神学園の問題児再来
夕城 真太郎の緊張は、極度に達していた。

タイマントーナメント。

多くの出場者には、これまでの修行の成果を試す集大成としての意味合いが強い。

真太郎とてそれは同じたが、彼にとっては更に重いものだ。

彼は夕城を破門された身。

今尚『元跡継ぎ』の肩書きは消えない。

その返り咲きを誓い、単身この天神学園で己を磨き続けてきた真太郎。

その修行の中で、己の器を知り、強さを知り、『慢心』という言葉を捨て去った。

それ故に緊張する。

このタイマントーナメントで、敗北するような事があれば…。

父は、母は、間違いなく真太郎に2度目の失望をするだろう。

次期夕城宗主としての道は、確実に断たれる。

そんな彼に。

「不甲斐ないちや」

目の前の男が溜息をついた。

柾一刀流・丹下 龍馬。

目下の所、真太郎が一番の好敵手と認めている男。

その男が、溜息。

「やる前から何をビビッちうがか。真太郎はそがいにつまらん男じゃったがか」

「…口を慎め」

フ、と笑う真太郎。

「それでええ、それでええがじゃ」

龍馬もニッと笑う。

咬みつき合い、吠え合い、しかし時には傷も庇い合う。

丹下と夕城とは、そんな関係。

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