天神学園の問題児再来
象牙(ぞうげ)。

蜻蛉の構えを防がれて、詰まった間合いから繰り出された鋭い一撃は、龍馬の胸板を穿つ!

咄嗟に後方に跳んだのは、紫陽花仕込みの柔術としての判断か、それとも龍馬本人の野性的な勘か。

何にせよ。

「ぐ…」

浅くはなかった。

滴り落ちる血。

傷を庇わずにはいられない。

「……」

狂奏丸を振って返り血を散らし、真太郎は無形の位。

ここぞとばかりには攻め込まない。

認識しているのだ。

この男はここでは終わらない。

まだ何かある。

だから迂闊には飛び込まない。

「ちゃちゃ…痛かぜよ…」

傷を押さえても、血は止まらない。

止血にはしばらく安静が必要だろう。

だが。

「蜻蛉の構えが駄目なら…」

安静とは何だ。

龍馬は構える。

好敵手を前にして、安静を選ぶとは何だ。

そう言わんばかりに。

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