天神学園の問題児再来

1回戦第4試合

吸血鬼は夢を見ないという。

本当にそうなのかは、吸血鬼にしかわからない事だが。

…しかし、ヴラド・ツェペリは夢を見た。

人外、人間、あらゆる種族が自身の統治のもと、穏やかに暮らせる世界を。

ひねくれた彼は、それを支配だの征服だのと、言葉を変えているが。

やがてそれは、ディストピア(暗黒郷)の名を借りたユートピア(理想郷)だと、ヴラドの周囲の誰もが認識し始めた。

どんな種族、どんな人種だろうと、自由に暮らせる、受け入れられる世界。

素直でないヴラドの、温厚さの裏返しなのだろうと。

誰もがそう思ってやまない。

だが。

本当の所を言うと、ヴラドはどちらでもよいのだ。

暗黒郷だろうと、理想郷だろうと。

困難な、不道徳な世界だろうと、別に構わないのだ。

…彼女が傍らにいてくれるのならば。

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