天神学園の問題児再来
瑠璃の傍らで、母が俯く。

…そうだ。

真太郎は自嘲する。

自ら屋敷を飛び出したのだ。

少々腕を上げたからといって、再びここで暮らそうなどと図々しい。

そんな心中を見透かされるように。

「夕城 真太郎は、夕城流を破門になった。奴が二度と夕城流次期宗主を名乗る事はない」

瑠璃が言い放つ。

無論だ。

父の言う事は尤も。

吐いた言葉に責任を持つのも、男として当然の事。

何も言わず、深々と首を下げて、真太郎は立ち上がる。

「ところで」

瑠璃はもう一度茶を啜った。

「貴様、先のタイマントーナメントでなかなかの戦いを見せたな。何処の流派の者だ?」

「……」

立ち止まり、振り向く。

真太郎は、リスが砂糖菓子を舐めたような顔をしていた。

目を閉じ、言葉を紡ぐ瑠璃。

「いい腕をしている。どうだ、夕城流に入門せぬか。この屋敷で住み込みで修練に励み」

無表情の憮然とした顔で、真太郎を見る瑠璃。

「ゆくゆくは、この夕城流を継がぬか。俺達には、跡継ぎがいないものでな」

「それがいいアル!」

鬼龍が、パッと顔を上げた。

「今夜は泊まっていくといいアル!夕食は唐揚げと花丸ハンバーグと、卵焼きにするアル!も、勿論口に合えばアルが!」

合わぬ筈がない。

どれも真太郎の大好物。

潤む眼を強く閉じ。

「御親切、痛み入ります」

真太郎はもう一度、首を垂れた。

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