天神学園の問題児再来
天神地区の郊外にある、廃墟と化した洋館。

花龍はここに足を踏み入れていた。

ギシギシと音を立てる床。

静まり返った中を、マテバもアルトゥルスも手にせず歩いていると。

「不用心だな」

蟀谷に、マンイーターの銃口を突き付けられた。

「銃も抜かずに我がテリトリーに入るだと?嘗めているのか、串刺しにするぞヒューマン」

「…すみません、眷属失格ですね」

銃口を突き付けられたままだというのに、花龍は微笑みながらヴラドの顔を見た。

「…何の用だ」

面白くなさそうに、マンイーターをインバネスコートに収めるヴラド。

面白くなさそうに見えるのは、表情のせいだけではないだろう。

もう片方の愛銃ソウルイーターも修理しなければならないというのに、まだ体調が優れない。

古びたテーブルの上に、分解したソウルイーターが投げっ放しだった。

「…メンテナンスしましょうか。私が触ってもよければですが」

「主の武具の手入れも、眷属の仕事だ。やれ」

ぶっきらぼうにそう言って、近くの薄汚れたソファに座るヴラド。

「あとで漢方のお茶でも淹れますね。茶葉を祖母から貰ってきたんです」

ソウルイーターの部品を持ち上げながら、花龍が言う。

「龍娘の差し金か…吸血鬼に効くかどうかわからんというのに、あの馬鹿が」

親切には慣れていないのか。

ヴラドは礼というものを知らない。

それでも花龍は嫌な顔1つしない。

それどころか。

「思うんですけど…ヴラド先生には、漢方より血の方がいいですか?」

そんな事を言ったりする。

「…そうだな…そこの棚を開けろ。輸血用血液を、知り合いの無許可医から譲り受けている。1パック飲む事にする」

色々非合法な教師だ。

「それより」

花龍はソウルイーターを置き、ヴラドに向き直った。

「新鮮な血液の方が、疲労が回復するんじゃないですか?私の血とか…」

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