天神学園の問題児再来
「方便に過ぎない!」

本来ならば心臓を一突きする刺突、哀歌(エレジー)を放つ紅葉!

彼の眼鏡は、視力を補う為のものではない。

眼がよすぎるが故の、いわばセーブする為の枷。

それを弾き飛ばされた今、紅葉は全力を行使する事が出来る。

今の紅葉ならば、心臓に届くか届かないかのスレスレを見極め、黄昏の切っ先を真太郎の胸に突き刺す事が出来る。

しかしこれを。

「何っ?」

真太郎は左手で摑み取った。

無論素手だ。

白刃を素手で摑むなど、下手をすれば指が落ちる。

「そこにいる俺の好敵手は、俺以上に上手く白刃取りをやってのける」

顎をしゃくり、龍馬を指す真太郎。

「俺を一番磨き抜いてくれた、俺の仲間だ」

「しゃらくさい!」

紅葉は黄昏を摑まれたまま、突然の倒立からの片足回し蹴り『シャペウ・ジ・コウロ』、立ち上がって後ろを向きながら回転肘打ちをする『サイ・リウ・ラン』、更に身を翻しての横薙ぎから、背面部で体当たりし内部の勁と外部の打撃を同時に与える『鉄山靠(てつざんこう)』!

夕城流奥義の1つ、薔薇乙女(ばらおとめ)。

多彩な能力を持つ紅葉は、琴月流だけでなく、夕城流の多くの技にも精通していた。

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