恋する5秒前~無愛想なキミと~

朝の教室は誰もいないから読書に集中できるかも。


図書室から借りた本を読んでいると教室のドアがガラリと開く音が聞こえてきた。


本を読むのを一旦止めて顔を上げると、入り口に佇む桜井君と視線が合った。


挨拶くらいしなきゃ。


「お、おはよう」


「……はよ」


私は本を胸に抱えて立ち上がると


「き、今日も学校へ来るの、は、早いんだね」


「水野だって早いじゃねぇか」


「あ、うん。私はちょっと……」


「なんだよ?」


自分でも分かるくらい話す言葉が震えていたんだ。


ジリジリと私との距離を詰めてくる桜井君。


私は後退りをしながら


「き、昨日一緒にいた、子は、彼女?とっても可愛らしい子だね……ハハハ」


私は早口でそう言うとそのまま教室を飛び出した。


桜井君と二人きりで教室にいるなんて無理!


「あ、おい。水野、待てよ!」


後ろから聞こえてくる桜井君の声。


彼から逃れるように私は廊下を全速力で走り出した。

< 105 / 297 >

この作品をシェア

pagetop