恋する5秒前~無愛想なキミと~
「別に逃げてなんかないし、私の勝手でしょ。桜井君こそ、どうして追いかけてきたの?」
「さぁ、どうしてだろうな。なぁ、本当に瀬戸と付き合うのかよ?」
含み笑いをする彼をキッと睨むと
「なんだよ、文句あるのかよ」
「どうしてそんなことを聞くの?桜井君には関係ないことでしょ?じゃあ、聞くけど昨日ファミレスで一緒にいた子は誰なの?」
桜井君は一瞬言葉に詰まった様子。でも直ぐに口を開いた。
「俺が誰と一緒にいようと、お前には関係ねぇだろ。違うか?」
「そうだよね、私達関係ない同士だもの。聞くだけ損したよ」
私はそう言って立ち上がった。
お互いに意地の張り合いをしているから収拾がつかない。
「じゃあ、瀬戸と付き合うんだな?ってことは、アイツのこと好きだってことかよ?」
桜井君も立ち上がる。
「私、まだ付き合うとも、好きだとも言ってないから」
まさに、売り言葉に買い言葉。言い争いは終わらない。
「そうかよ」
桜井君はため息をひとつ溢すと、私に覆い被さるように、バンと音を立てながら両手を壁についた。
その音で一瞬ビクッと反応した私。
「だったら、好きでもないヤツとこんなことできるのかよ?」
「えっ?」
私の顎に手を添え上に向かせると桜井君が顔を近づけてきた。