恋する5秒前~無愛想なキミと~
「普段は優しくてもアイツだって男だからな。いざとなったらお前逃げられるのかよ?」
やだ、やだ。
こんな形でファーストキスを奪われたくない。
間近に迫る桜井君の顔。
怖くなって思わずギュッと目をつぶった。
どうしよう、本当にしちゃうの?
「いや、やめてっ!」
私は彼を力いっぱい、突き飛ばした。
「痛ってぇ。それくらい力があるんなら大丈夫だな」
よろけた拍子で壁にぶつかる桜井君。
「瀬戸と仲良くやれよ、おめでとさん」
彼はニヤリと笑いながらそう言うと私を残して行ってしまった。
あぁ、怖かった!もう少しでキスをされるところだったよ。危なかった。
緊張と恐怖で体がカタカタと小刻みに震えていた。
私は本を胸に抱えるとその場に力が抜けたのか、ヘナヘナと座り込んだ。
それと同時にじんわりと溢れてくる涙。
どうしよう?私、今更ながら気づくなんて遅すぎるよね。
でも、気づいてしまったんだ、自分の本当の気持ちに。