恋する5秒前~無愛想なキミと~


夕御飯のカレーライスを作っていると


「ねぇ、タマちゃん。桜井君から未来にお手紙来なかった?」


「手紙、それがどうしたの?」


鍋に入れたカレールーをお玉でグルグルと回しながら溶かしていた。


「未来、お手紙にね、返事を下さいって書いたの桜井君に渡したの」


「ううん、もらってないよ」


「可笑しいなぁ。翔くんに頼んだのになぁ」


がっかりした様子の未来。


「未来、桜井君へ渡したお手紙にはなんて書いたの?」


返事が欲しいって言うんだから、私にも言えないことなの?


「それは秘密。私が桜井のお兄ちゃんと約束したことだから言えないんだ」


頭を振ってキッパリ断る未来。


これ以上隠さないで、正直に話すしかないのかな。


本当のことを話せば未来も納得してくれるはず。


「ねぇ、未来。あのね、私と桜井君はケンカしちゃったの。まだ仲直りをしていないから、お返事はもらえないと思う」


「そうなんだ、タマちゃん。桜井君と仲直りできないの?」


未来は不安そうな顔をしながら覗き込んできた。

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