恋する5秒前~無愛想なキミと~

「夏休みに入ったから、しばらくは無理かな。ごめんね、未来」


「うん」


しょんぼりと首をうなだれている彼女の頭をそっと撫でた。


ずっと桜井君から返事をもらうのを待っていたんだね。


「タマちゃん、今日は桜井君学校お休みしてたの?」


「ううん、お休みしてないよ」


「ふーん」


そう言えば前に未来が私に聞いてきたことがあったっけ。あれは返事を預かったかどうか確認してたのかな?


私ってば、そんなことも気づかずにいたなんて。


最近、自分のことばかり考えてて周りのことが見えなくなってたんだね。


「ねぇ、未来。今度学校で桜井君に会ったら聞いてみるから、ね?」


「うん。いいよ」


取り敢えずフォローはできたけど、果たして桜井君に未来の手紙の事を聞けるかどうか……。


先日の出来事が頭の中でよみがえる。


「普段は優しくてもアイツだって男だからな。いざとなったらお前逃げられるのかよ?」


「痛ってぇ。それくらい力があるんなら大丈夫だな」


「瀬戸と仲良くやれよ、おめでとさん」


思い出すだけでため息が零れるよ。


あんな形で桜井君と言い争いして夏休みに入っちゃったからなぁ、余計に聞きにくいよ。

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