恋する5秒前~無愛想なキミと~
ここは人気の水族館だけに入場料金もそれなりに高い金額を払わなければ中へ入れない。
瀬戸君だってアルバイトしていないのに、私の分も払ってもらうのは申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「気にすんなって、水野さんと初めて出掛けるの、俺、凄く楽しみにしてたからさ」
両耳の端を赤く染めながら話す瀬戸君は柔らかい笑みを浮かべていた。
人が笑ってる姿を見ると、こちらまで笑顔になるよ。
「笑顔」って人と人を繋ぐ、とても大切な表現なんだなと、瀬戸君を見ているといつも思うんだ。
「ありがとう。お昼ご飯は私がお金を出すね」
「ん、俺に気を使わなくていいから。行こうか?」
瀬戸君はそう言って私の手を取ると、指を絡めて歩きだした。
「涼しいね」
「あぁ、生き返るな」
館内は冷房が効いていて、とても心地がいい。
薄暗い館内の中を案内板を頼りに進んで行く。
「あっ、見て!大きな水槽」
「おぉ、すげぇな」
しばらくすると大きな水槽が目の前に現れてきた。