恋する５秒前～無愛想なキミと～

大きなエイや海ガメに、大人しそうなサメ、大小様々な魚が水槽の中をところ狭しと泳いでいた。


日曜日ということもあって、館内は家族連れやカップル、学生グループなどが訪れていて、とても賑やか。


水槽の前で小さな女の子が嬉しそうに近寄ってくる魚を指差しては


「このお魚さん、なんて言うの？」


後ろに佇む若いお父さんに何度も聞いていた。


２人のやり取りを見ていた私は家に残してきた弟達のことを思い出していた。


未来と翔は今頃なにをしてるかなぁ？


今日はお母さんも里美ちゃんもお休みだから、皆でどこか出掛けたかもね。


ここの水族館は２人ともまだ来たことがないんだよね。


一緒に連れてくれば良かったかな？


あっ、でも。ムリだよ。


瀬戸君とのデートだもん。未来達が一緒にいたらデートにならないよね。


桜井君だったら、どうするのかな？


ふと浮かんだ不機嫌そうな顔をした彼。


でもね、笑うと、とても優しい雰囲気に変わるんだよ。私だけが発見した彼のチャームポイント。


桜井君だったら、なんて言うだろう？


そんなことを考えつつ、目の前でゆったり泳ぐ魚を眺めていたら。