恋する5秒前~無愛想なキミと~
「うん、ここで待ってるからゆっくり行ってきて」
「すぐ戻ってくるから」
瀬戸君はひと言残すと人混みの中へと消えていった。
小さな男の子が割り込んできて後ろに下がった私はよろけてしまい後ろに立っていた人にぶつかったんだ。
「す、すみません!」
後ろを振り返り頭を下げて謝った。
「あぁ、俺の方は大丈夫だけど」
あれ?この声はもしかして……。
見上げると目の前に佇んでいたのは
「桜井君」
「……水野」
薄暗い館内でも分かる彼の顔。
相変わらずの不機嫌そうな顔に、低い声。
バスケ部で鍛えた均整のとれた体型に見上げるほど高い身長。
どこから見ても桜井君だ。
こんな遠く離れた場所なのにまさか彼も来ていたなんて。
運命のイタズラだとしか思えないよ。
なんて声を掛けたらいいのか迷っていると
「瀬戸と来たんだろ?」
桜井君の方から話を切り出したんだ。