恋する5秒前~無愛想なキミと~


「面白かったね、イルカが可愛かったなぁ」


「イルカのジャンプ、結構迫力があったな」


イルカやアシカのショーが終わって会場を出ようと歩いていると


「あっ、あれ、桜井じゃない?」


「えっ、どこ?」


「ほら、あそこにいるの間違いない、桜井だよ」


瀬戸君の口から自然と出てきた名前。


彼の指差す方向に視線を移すと、桜井君の姿が目に入った。


「なんだ、アイツもここへ来てたんだな」


「そうなんだ、知らなかったよ。瀬戸君、桜井君のこと知ってるの?」


わざとらしく言ってみたけど、瀬戸君気づくかな?


「知ってるもなにも、俺と桜井は小学生の時から同じ学校へ通ってたから」


意外なことを聞いてしまった。


まさか、瀬戸君と桜井君が同じ学校の出身だったとは。


「じゃあ、桜井君の横にいる女の子は知ってる?」


瀬戸君は前を歩く桜井君達をもう一度眺めると


「あの子は確か桜井の彼女じゃなかったかな?」


「桜井君の彼女?」


やっぱり、そうだったんだ。


薄々気づいていた事が、今、はっきりと分かったんだ。


ファミレスで見掛けたあの子は桜井君の彼女だったんだ。


じゃあ、どうして?


彼女がいるのに私と瀬戸君の事を問い詰めたり、キスする真似なんかしたの?


熱帯魚の水槽の前で、桜井君と話したことが、夢の中での出来事みたいに思える。


あれは桜井君の幻だったの?

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