恋する5秒前~無愛想なキミと~
「俺がぬいぐるみ代を払うよ」
「そんな、いいよ。気を使わないで」
ジーンズのポケットから財布を取り出してレジに向かおうとする瀬戸君を止めたんだ。
「気を使ってるわけじゃなくて、今日は一緒にここへ連れて来れなかったからさ。お詫びのつもりなんだけど」
ポツリと話す瀬戸君。
そっか、翔と未来のことを考えていてくれたんだ。あの子たちの事、気にしていないのかと思ってたんだ。
瀬戸君なりに気にしてくれてたんだね。
「ありがとう、気持ちだけ受け取るね!直ぐにお会計してくるから待ってて」
「……ん、分かった」
私は急いでレジに向かい、会計を済ませて店内で待つ彼のところへ戻ってきた。
「その荷物、貸して。俺が持つよ」
「い、いいよ。自分で持てるから」
「俺に気を使わなくていいから」
瀬戸君はそう言いながら私の手から、ぬいぐるみが入った紙袋をヒョイと取り上げたんだ。
「次、どこへ行こうか?」
「次は弟にもお土産を買ってあげたいんだ。良いかな?」
未来だけにお土産を買って、翔にも何か買ってあげないと、きっと怒るだろうな。