恋する5秒前~無愛想なキミと~
「家まで送ってくれて、ありがとう」
翔へのお土産も買い終わり、水族館を出てからは電車に乗って移動した。
着いた先は大きな商業施設が建ち並ぶ繁華街。
瀬戸君とウィンドウショッピングを楽しんだり途中でカフェに寄ってお茶をしながらお喋りしたり。
楽しい時間はあっという間に過ぎて、再び電車に乗って家まで戻ってきたんだ。
「今日は楽しかったね」
「あぁ、俺もすげぇ楽しかった」
スマホで時間を確かめると、7時半を過ぎていて辺りは既に暗くなっていた。
ここは住宅密集地の路地が入り組んだ場所、昼間と違って夜は周りの景色が見えにくく、どこに何があるのか分かりずらい。
「遅くなっちゃったね、この辺暗いし道も分かりにくいから、気を付けて帰ってね」
「ん、たぶん大丈夫だと思うけどな。家着いたら連絡する」
「うん、待ってる。じゃあね」
私はクルリと向きを変えて、玄関のドアノブに手を掛けようとしたら……。
「……あ、待っ」
「えっ!」
瀬戸君に呼ばれて振り返ると同時に腕を掴まれて勢いよく引っ張られた。