恋する5秒前~無愛想なキミと~
「まさか、5歳児に負けるとは……」
「そんなにガッカリしないで、5歳の子が言うことなんて大したことないから、ねっ?」
いつも保育園で仲良く遊んでるだけなんだろうけど。
「だって、未来。大地君とチューしたもん」
「チューしたって、ウソでしょ……」
未来の爆弾発言にめまいがするのか、彼女を抱っこしたまま、よろめく香奈。
「ちょっと、香奈。危ないから未来を降ろしてあげて」
「あ……あぁ、ごめん」
「まあ、ホッペにチューしただけだと思うよ」
すかさずフォローを入れる私。
ホントに今の保育園児はオマセなんだから。
朝から強烈なパンチを浴びせられた香奈は既に放心状態。
でも、こんなことで時間を取られている場合じゃないよね。
早く図書館へ行かないと!
「翔!香奈が来たから図書館へ行くよぉ!」
玄関で香奈と未来を待たせて、リビングへ入り荷物を持つ。
「姉ちゃん、お待たせ!」
帽子を被った翔が2階から降りてきた。
「これで、よし!これから暑くなりそうだね」
私は玄関のドアに鍵を掛けると、空を見上げた。
「香奈、行こうか?」
「うん、行こう。早く行かないと自習室が埋まっちゃうかもね」
放心状態から戻った香奈は笑顔を見せた。
真夏の空の下、私たちは足を早めて図書館へ向かって歩きだしたんだ。