恋する5秒前~無愛想なキミと~
「どれにしよう?」
児童書のコーナーへ行くと目を輝かせている未来は、あちこちの棚をウロウロしながら物色中。
「ゆっくり選んでいいよ」
「うん」
あれも、これも保育園で読んだことがあると未来に絵本を見せられて、相づちを打つ私。
「わあ、懐かしい。この絵本、幼稚園のときによく読んでもらったなぁ」
それは小さなネズミが出てくるお話しで、大きなパンケーキが美味しそうに描かれていたっけ。
懐かしさのあまり絵本のページを捲るのに夢中になっていたみたい。
あ、そうだ!未来は?
パッと顔を上げて周りを確かめてみると……。
あ!いた、いた。
近くの椅子に座って大人しく絵本を見ていた。
「未来、何の絵本を見ているの?」
ここは図書館。
大きな声を出すと注意を受けてしまう。
私は声を潜めて彼女の横に座って絵本を覗き込んだ。
「うんとねぇ、電車が出てくる本を読んでるの。大地君がねぇ、この本が面白いって言ってたんだよ」
「へぇ、大地君は電車が好きなの?」
「うん。大地君はねぇ、電車のことなら何でも知ってるんだよぉ」
「へぇ、大地君は電車博士なんだね、スゴいね!」
大地君のことを誉められて嬉しそうな顔をする未来。
そうだよね、好きな人が誉められたら誰だって嬉しいよね。