恋する5秒前~無愛想なキミと~
「誰?」
呼ばれた方へ振り向くと、直ぐ後ろに立っていたのは
「……桜井君。なに?」
桜井君が鞄を肩に担いで仁王立ちしていた。
見上げると視線が重なった。
相変わらずの仏頂面で私を見ている彼はいつもの桜井君だ。
「足、ケガしてんだろ?」
「えっ!……どうして?」
「そんなの見れば分かるんだよ」
桜井君、ちょっと怒ったような口振りで言うもんだから、思わず後退りしちゃったよ。
「だっ、大丈夫だよ。これくらい平気だから。ねっ?」
左足をクルクルさせて、安心させようと演技をしてみたけれど、上手くできなかったみたい。
「いたっ!」
あまりの痛さに顔をしかめちゃった。