恋する5秒前~無愛想なキミと~

「それよりさぁ、ここの自習室受験生の人が多くない?」


「そう?」


香奈に言われて自習室をぐるっと見渡す。


「そうだね、確かに多いかも」


「だよね、あぁ私達も来年は受験生になるんだよねぇ。環は何系の大学にするの?」


香奈から進路を聞かれた私は一瞬答えに迷ってしまった。


「まだ、やりたいことが見つからなくてまだ決まってないんだ。それにね、瀬戸君から同じ大学を受けないかって言われてて」


この前の水族館デートのときに瀬戸君から言われたんだ。


でも、直ぐに返事が出来なくて……。


「そうなの?瀬戸ちゃん、ずいぶんと積極的だなぁ。どうしちゃったんだろ?」


「たぶん、私が迷ってるって話したからだと思うよ。瀬戸君は優しいから」


「いいなぁ、環は。愛するダーリンから同じ大学受けない……なんて誘われてさぁ、羨ましいぞ」


「そ、そんな羨ましいって言われても……」


私は反対に困っていると言うのに。


桜井君はどこの大学を受けるのかな?バスケが得意だから、バスケ部が強い大学とか受験するのかなぁ?


いけない!


瀬戸君のことを話してたのに、桜井君のことを考えてるなんて、彼女としては失格だよね。


ダメだな、私。


「香奈はもうどこを受けるか決めたの?」


私に聞くくらいだから、進路は既に決まってるのかも。


「私?私は一応文系にしようかと思ってるんだ。まだ大学は決めてないけどね」


「そうなんだ」


しっかり者の香奈でも、進路はまだ決めかねているんだ。

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