恋する5秒前~無愛想なキミと~
そうだよね、私達はまだ高校2年生だもの。まだ実感が湧かないから、進路なんて決められないよ。
イヤだねと言いながら香奈とクスクスと笑い合う。
すると、隣で勉強をしていた男子からジロリと睨まれてしまった。
「すみません……」
私は小さく会釈をして彼に謝った。
いけない、いけない。
ここは自習室ということを忘れていたよ。私語は慎まなきゃね。
私の隣では未来が静かに絵本を読んでいて、翔は算数のドリルを開いて計算問題に格闘している。
皆、静かに勉強をしている。
私も残りの宿題を片付けなくちゃ。
数学のプリントをテーブルの上に出していると
「タマちゃん、絵本読んだから次の本を探しに行ってもいい?」
未来が小さな声で私に耳打ちをしてきた。
仕方ないな。宿題はお預けにして未来に付き合わなくちゃ。
「未来、これをカバンの中へしまうからちょっと待ってて」
「うん」
軽く首肯く未来を待たせて、急いでプリントをカバンの中へとしまった。
これで、よし!
「香奈、ちょっと未来に付き合って1階に行ってくるから」
香奈はにっこり笑いながら首肯くと、小さく手を振って送り出してくれた。