恋する5秒前~無愛想なキミと~
「ほら、樹里が待ってるから行くぞ」
「あ、俺。門倉賢司って言うの。よろしく!……って、なんだよ、隼人。引っ張るなよ」
桜井君に腕を引っ張られながら、自己紹介をする門倉君。
「あ、はい。よろしくです」
私もつられて頭を下げた。
あの人、門倉君って言うんだ。桜井君とは正反対の人当りの良さがにじみ出ている。
「じゃあな、水野、未来も、な」
桜井君は未来の頭をくしゃくしゃっと撫でると門倉を引き連れて行ってしまった。
呆気に取られていた私達。
「さあ、未来。新しい本を選んで、香奈達のところへ戻るよ」
「うん」
気を取り直した私達は児童書コーナーへと移動した。
そう言えば、さっき門倉君っていう人が桜井君に言ってた名前は確か、梁瀬樹里(やなせじゅり)って言ってたよね?
どこかで聞いたことがあったような気がするんだけど、思い出せないなぁ。
香奈に聞けば何か知っているかも。
「タマちゃん、今度はこの絵本にする」
絵本を3冊ほど抱えて戻ってきた未来。
「さて、自習室へ戻ろうか」
「うん、行こう、タマちゃん」
パタパタと足音を立てながら先を歩く未来。
私も彼女の後を追うようについて行った。