恋する5秒前~無愛想なキミと~
「ヘタな演技すんな」
桜井君は私の右手をギュッと掴む
と今来た道を戻って行く。
「ちょ、ちょっと!どこ行くのっ?」
「別に変なとこへ連れてくわけじゃねーから、心配すんな」
廊下を行き交う生徒達が私と桜井君を不思議そうな顔をして眺めている。
痛む左足を引きずりながら歩いてくと着いたところはもちろん……。
「先生、ちょっとケガしたヤツがいるんで見てくれますか?」
桜井君が連れて来てくれたのは保健室。
消毒薬の匂いがする部屋に入ると養護の先生が椅子から立ち上がり
「あらあら、ケガしたって、いったいどうしたの?そこへ座って」
ケガの様子を確認してくれた。
「骨は折れてないみたいだから、捻挫かもしれないわねぇ。湿布をしておくから、痛みがひどくなったら病院へ行きなさいね」
「はい。先生、ありがとうございます」
養護の先生は手際よく湿布を貼り、包帯を巻いてくれた。