恋する5秒前~無愛想なキミと~
これは高校に入ってから毎日、夕御飯の準備をしていたおかげかな。
いつの間にか料理の腕前も少しずつ上がっていったのかも。
今では仕事から帰ってきて料理を作るお母さんを尊敬してるんだ。
こんな風に思えたのは、高校に入ってから自分がお母さんと同じ事をするようになってから。
「冷めないうちに食べようよ」
「いただきます!」
合図と共に、皆一斉に餃子のお皿へと箸を伸ばした。
「ん!この餃子、肉汁がスゴい出てくるっ!美味しいっ」
香奈が餃子をひとつ食べ終えると美味しいを連発した。
「この餃子ね、スープを練り込んであるから、柔らかくてジューシーになるんだよ。これはね、お母さんから教えてもらったんだ」
「へぇ、この餃子、スープが入ってるんだ。だから肉汁が溢れてくるのか。知らなかったよ」
餃子を箸でつまみ上げ、眺めて感心する香奈。
「私なんか料理まるっきりダメだから、環を尊敬しちゃうよ」
「そ、そんな尊敬するなんて大げさな」
香奈に言われて、ふと桜井君が我が家に来たことを思い出した。
私が作ったチャーハンを食べてくれたときも美味しいって誉めてくれたんだよね。
あの時も桜井君に誉めてもらえてとても嬉しかったのを覚えてる。