恋する5秒前~無愛想なキミと~

「なぁ、水野。何があった?」


「どうして、そんな事を聞くの?」


「どうしてって……そんなの、お前の顔を見れば分かるんだよ」


顔を見れば分かるって、私って顔に出るタイプなの?


なかなか理由を言い出さない私の態度にイラついてるのか、桜井君はいつにも増して不機嫌そうな顔で私のことを見ている。


「翔と未来がいなくなっちゃったの……だからクラスの皆と手分けして捜してるんだ」


簡単に説明した私は


「私、捜さなくちゃいけないから、この手を離してくれない?」


桜井君に掴まれた手を離してもらおうとお願いしてみたら


「俺も一緒に捜す」


周りの声が大きくて桜井君が何を言っているのか聞き取れない。


「あの……今、なんて言ったの?」


もう一度聞き返すと


「だから、俺も捜すって言ってんだろっ!」


いきなり大きな声を出す桜井君。


「わあっ、びっくりした!」


驚いた私はその場で跳ね上がってしまった。


「なあ、賢司」


賢司って誰?


桜井君が顔を向ける方に視線を移す。


すると、樹里さんの横に佇む一人の男子と目が合った。


「なんだよ、隼人」


あ、あの人は図書館で会った男の子だ!


「俺さ、ちょっと用が出来たからさ、樹里のこと頼むな」

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